(2016年8号)
いよいよ2016年も残すところ約一ヶ月となって参りましたが、この時期になると1月始まりの企業の皆さまからは来季の昇給や評価に関するご相談が急増します。評価の考え方に関しては以前3回に渡ってNews Letterを書かせていただきましたので、今回は評価面談への臨み方のポイントと評価結果の対価に着目してみました。
評価とは認知(Recognition)、感謝(Appreciation)、そして労に報いる事(Reward)
評価や面談を有意義なものにするためには、目的や意義をより明確に認識する事が不可欠となります。つまり、評価というプロセスは「何のために行うのか」そして「何を伝えたいのか」という部分に関して評価者側が理解している必要があり、これが欠けてしまうとEmployee Engagementを生む事は難しくなってしまいます。
一般的な考え方の場合、評価とは従業員の仕事を認知する(Recognition)、取り組みを感謝する(Appreciation)、その労に報いる(Reward)といった目的や意義があるとされています。ただし、これにはブレないための指針が必要であり、対象やタイミングによって度合いが変わって来る事はNGなので注意が必要です。
アメリカの企業では”Recognition Program”と呼ばれるものなどがあり、年間の成果を測る評価制度とは別に”Employee of the Month”などの表彰を行っている場合もありますが、評価の一環として”Recognition”するケースも多くあります。そのため、今回は評価面談の中でのRecognitionのポイントを以下の様にまとめました。
1. 何が認知に値したのか、その成果がどうだったのかを明確に伝える
2. 使用する言葉をしっかりと選ぶ( “because”や”as a result”などの言葉を用いる)
3. 複数の従業員に対して同じ言葉やフレーズを用いない
4. 従業員の名前や”you”を多く用いる
5. “Thanks”や”Thank you”といった、感謝の言葉を用いる
6. 従業員の考えや思いに耳を貸し、しっかりと聞く
7. 相手がどの様に認知されると嬉しいのかを考え、実践する
8. 相手の良い点に着目し、時間の80%を良い点に費やす (80/20の法則)
大まかな方向性としては、メッセージを届けるためには相手の事を理解しようとする努力が必要で、従業員各々に対して最も伝わりやすい方法で発信する事が重要なのだと思います。また、日本では「改善」の意識が強いためか、「できなかった事」が評価のコミュニケーションの中心になってしまいがちですが、アメリカでは少し大げさでも良い部分に多く触れて話す事が重要なのかと感じています。
最近のトレンドとなっている変動給
評価といえば、欠かせないのが対価をどうするかという部分ですが、一般的なのはやはり昇給やボーナスなどの金銭的なものになります。最近の傾向としては、基本給(Fix Costs)を上げる事よりも変動給(Annual Bonus and other Performance-based Compensation)を従業員に与える形が取られています。これは、景気が見えない中で固定費を上げるリスクを避けたい思惑がある様にも捉えられます。
また、最近は最低賃金の上昇傾向もあり、給与レンジの見直しを行っている企業も多い様です。2016年はレンジの上限を1.9%上がり、2017年は2.1%上がると言われています。さらに、給与レンジのMaxに到達してしまっている従業員に対しては、60%の企業が昇給ではなくLump Sumという形で対応している様です。
評価はマネジメント側と従業員側双方にとって時間や労力を費やすものなので、そのプロセスが有意義になるよう、今回の評価面談を行われる前にRecognitionとRewardの方法を、一度見直してみるのも良いのかもしれません。
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