(2017年1号)
2016年12月1日に改正が予定されていたFLSA (Fair Labor Standard Act =公正労働基準法)が、12月まであと約10日という所で突如見送りとなったのは、皆さまにとっても記憶に新しい事かと思います。この件に関して同業者と意見交換をした所、印象的だったのは、やはり多くの中小規模の日系企業の対応が遅れており、改正が見送りになった事で胸を撫でおろしてる状況にあるという事です。
ところで、今回の改正に関わる”リスク”とはいったい何だったのでしょうか。
改正のポイントは、Exemptの従業員の最低年収が上がると共に、その金額以下の従業員はExemptであっても残業代の対象となるという事だったため、”人件費の高騰”という事が表向きのリスクでした。しかし、多くの企業にとってはそういった直接的な影響よりも、根本的に抱えている問題が脅威となっていました。
その根本的な問題というのはMisclassificationであり、いわゆるExempt/Non-Exemptという従業員区分に関して誤りのある会社が多いという事です。これは今回の改正とは直接は関係のない部分なので、実は改正が見送りになったところで解決する問題ではなく、引き続き注意が必要になる部分です。
大事なのは「喉元過ぎても熱さを忘れず」に、問題点があったのならばそれを正していく事ですが、今回対応が遅れていた組織には、その部分を是正する事が難しい状況だった所もあったかと想像できます。ただし、対応が難しいからといって、問題が露出するまで放っておく事は避けたい所ではあります。
なぜなら、例えばMisclassificationというのは、一見大した問題で無いように見えるかもしれませんが、実はとても大きな問題で、発覚した場合のBack Wage (未払い残業代)が多額のものになるだけでなく、ペナルティも罰金だけではなく禁固刑一年まで科せられる可能性もあります。そのため、リスクを認識し、それをしっかりと管理して行く必要性があります。
これは以前からNews Letterにて書かせていただいている事の繰り返しになりますが、リスク管理のためには、まずは組織の状況を把握する事、問題解決に対するプランを立てる事、そしてそれを実行するという流れで対応して行く事が重要になります。つまり、現在抱えている問題を是正する事がどの程度難しい事であり、どの程度時間がかかるものなのかという事と、それらを一定の時間軸の中で何をどう進めて行くべきかを考える事がポイントとなってきます。
今回の件に関連する問題点としては、各従業員のFLSAステータスを確認してMisclassificationの有無を把握する事、そのMisclassificationを是正する際の変更ポイントと従業員に与える影響を整理して対策を打つ事、そして場合によってはこれから新たにかかり得る残業代の計算や人件費予算の調整が必要となり、実際に変更するといった流れになるのかと思います
また、「本業が忙しくて、ここまで手が回らない」という組織もあるかもしれませんが、こういったものへの対応が後手になってしまっている組織の中には、本業も後手になってしまっているケースも考えられます。2017年は「脱・後手型のサイクル」を作り出して行くべく、先手を打って問題を解決して行く形を目指して活動をされてみるのはいかがでしょうか。
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